空き家売却の税金と特例。相続・売却前に知っておきたい 3つの節税ポイント

損しないために今から意識できるポイントについて解説!

空き家を売却するとき、多くの方が悩むのが「税金」の問題です。

生活に密接するようなものですが、種類が多くなかなか理解するのも難しいのが正直なところ。。。

実は、相続から3年以内に売ると控除が使える場合や、解体した方が得になるケースなど、
少しの違いで数百万円単位で損をしてしまう形があります。

この資料では、空き家を売却する前に必ず知っておきたい税制の基礎と特例をわかりやすく解説します。

知らないと数百万円以上損!? 空き家売却で発生する税金の種類とは

まずは、空き家の売却でかかる代表的な4つの税金を整理しましょう。

売買に関わる税金は契約書類に必要な収入印紙(印紙税)を除くと、譲渡所得、住民票、復興所得税、登録免許税があります。

税金 税率
所得税 ・長期保有なら所得税30%
・短期保有なら所得税15%
住民税 ・短期保有なら9%
・長期保有なら5%
復興特別所得税 譲渡所得税の2.1%(長期保有なら0.63%、短期保有なら0.315%)

上記の通り、譲渡所得の額に応じて金額が大きく変わってきます。さらに、詳しく上記の税金等について見ていきましょう。

譲渡所得税は売却によって得た利益に対して課される税金

譲渡所得税は、売却金額から対象不動産の取得にかかった金額(購入費用やその他購入にかかる諸費用を足した金額)と売却にかかる費用を引いたときに、プラスとなった場合にかかる税金となります。

売却金額 ー(不動産の取得費用 + 売却の諸費用)= 譲渡所得

譲渡所得が算出できたうえで、所定の税率(所得税、住民税、復興特別所得税含む)をかけると譲渡所得税を算出できます。

また、保有の時期によって、税率が変わる点に注意です。

・短期譲渡所得(所有期間5年以内):39.63%
・長期譲渡所得(所有期間5年超え):20.315%

住民税は譲渡所得に対して課される税金

不動産売却時に所得税と同様に、住民税も課税があります。譲渡所得に対して、所定の住民税率をかけると、住民税の金額がわかります。

例)5年以上保有した不動産を売却し、譲渡所得が2000万円発生した場合譲渡所得:2000万円 × 住民税率:5% = 住民税:100万円の納付が発生。
例2)5年未満の不動産を売却し譲渡所得が2000万円発生した場合譲渡所得:2000万円 × 住民税率:9% = 住民税:180万円の納付が発生。

住民税に関しては、所得税と同様に、譲渡所得に対してしての課税になる点に注意が必要です。

復興特別所得税は所得税に所定の割合をかけて算出する税金です。

復興特別所得税は東日本大震災からの復興の目的として納める税金で、2037年(令和19年)まで、税率は所得税の2.1%です。

例)5年以上保有した不動産を売却し、譲渡所得が2000万円発生した場合(所得税は2,000万×15%= 300万円)
課税額:300万円×2.1%=63,000円

例2)5年未満の不動産を売却し譲渡所得が2000万円発生した場合(所得税は2,000万×30%= 600万円)
課税額:600万円×2.1%=126,000円

ポイント

売却時の税金として、所得税、住民税、復興特別所得税がかかってきます。それぞれ、5年以上の長期の保有と5年未満の短期の保有で、税率が大きく変わってくるため、保有期間には注意が必要です。

【最大の節税策】相続空き家を売却するなら「3,000万円控除」を必ずチェック

売却にあたり多様な税金がかかることが理解できたかと思いますが、昨今の不動産価格の値上がりをうけて不動産売却時の課税が重たく感じる方もいらっしゃるのではないのでしょうか。せっかく高く売れたのにその分、課税が重ければ不動産売却がネガティブに感じることでしょう。

しかし、不動産売却の際に3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。下記では3,000万円特別控除について詳しく見ていきましょう。

相続空き家3,000万円特別控除とは?

相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

これを被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。

※一般的な売却時の3,000万円控除とは異なるため注意。

前提、もともとの所有者が居住していた事が前提となり、下記要件を満たす必要があります。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された。(旧耐震)
  • 区分所有建物特がされている建物でない。(戸建て)
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかった。

上記のポイントを抑えたうえで、売却時には下記を意識して売却しましょう。

  • 相続開始日から3年を経過する日を含む年の12月31日までに売る。
  • 売却代金が1億円以下にする。
  • 該当の家や敷地について、他の特例を受けていない。(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など)

解体費が無駄にならない!?「空き家除却後の控除」も検討!

相続した空き家を使える見込みがないからと更地にしている方も更地を検討している方もいらっしゃるかと思いますが、上記の相続空き家3,000万円控除は土地のみでも対象となります。

ただし、取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないことが条件となりますので、その点に注意が必要です。

その他の節税対策【小規模宅地等の特例】

相続で不動産を売却する際、相続税の課税価格が最大80%減額の可能性がある、小規模宅地等の特例を利用することで、大幅に節税をすることが可能です。

例えば、評価額1億円の宅地を相続し、特例を利用すると評価額が2000万円に減額されます。

被相続人が居住していた宅地かつ面積が330㎡までなら、最大80%の減額が可能。

特例を使う場合はどうする?!特例申告の手順を解説!

相続空き家3,000万円控除については、以下のような書類を揃えて確定申告が必要となります。特に、所得額や耐震性などが適用要件となるため、それらを証明する書類が必要になります。

相続空き家3,000万円控除の必要書類

相続空き家3,000万円控除については、以下のような書類を揃えて確定申告が必要となります。特に、所得額や耐震性などが適用要件となるため、それらを証明する書類が必要になります。

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物]
  2. 該当土地及び建物の登記事項証明書など:昭和56年5月31日以前に建築され、家を所有していた人が住んでいた一戸建てであることを示すもの
  3. 被相続人居住用家屋等確認書:売った家や土地の所在地を管轄する市区町村長から交付を受ける
  4. 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  5. 売買契約書の写しなど:売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの

その他の節税対策【小規模宅地等の特例】

小規模住宅地等の特例は相続税に関わる特例のため、相続に関わる書類が必要です。

  1. 相続関係を確認する書類:法務局で作成をした法定相続情報一覧図又は被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍及び原戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本等です。コピーでも構いません。
  2. 遺言書のコピー又は遺産分割協議書のコピー
  3. 遺産分割協議書を提出する場合は、相続人全員の印鑑証明書
  4. 相続税の申告期限内に遺産分割がまとまらない場合には、申告期限後3年以内の分割見込書

節税を最大化するポイントまとめ

最後に改めて、相続や相続の売却時にかかる税金を整理し、節税のポイントを整理していきましょう。

不動産売却に関わる税金

税金 税率
所得税 ・長期保有なら所得税30%
・短期保有なら所得税15%
住民税 ・短期保有なら9%
・長期保有なら5%
復興特別所得税 譲渡所得税の2.1%(長期保有なら0.63%、短期保有なら0.315%)

また、節税の対策としては下記が考えられます。

  1. 小規模宅地等の特例【相続時】
  2. 最低でも5年以上は保有しておく【売却時】
  3. 空き家3,000万円控除の適用【売却時】

売却前に確認しておきたい「3つのチェックリスト」

  1. 相続登記は完了しているか
  2. 解体か耐震補強のどちらかを行ったか
  3. 売却時期が相続から3年以内か

これらの情報を基に、賢く不動産売却を進めていきましょう!

この記事の監修者

梅本 征吾

株式会社リノバンク
代表取締役
MBA(中央大学 戦略経営研究科)

リクルートにて営業・経営企画・事業開発・新規事業インキュベーションに従事し、複数の事業立ち上げに携わる。その後、株式会社アイスタイルで新規事業開発部部長を務め、FANTAS technology株式会社では空き家事業の立ち上げを担当。

事業譲渡後、株式会社リノバンクを創業し、全国で170件を超える空き家リノベーション・売却支援を行うほか、国土交通省「空き家対策モデル事業」採択企業として行政連携を推進。
また、全国空き家対策コンソーシアムの立上げに参画して地方自治体と連携して地域課題の解決に取り組む。

登壇・掲載実績として、東京大学 不動産イノベーション研究センター、全国住環境整備事業研修会、住宅産業研修財団への登壇や、リフォーム産業新聞・神戸新聞・住宅新報など多数のメディア掲載。


川口市に20年以上在住し、埼玉県南部エリアの不動産事情にも精通。地域特有の課題と市場動向を踏まえた実践的なアドバイスを得意とする。

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